コラム デジタルマーケティング

2023年のデジタルマーケティングトレンド予測

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SEOやWeb広告など、多くの企業が何らかのデジタルマーケティングを行っています。TISが実施した、従業員300人以上の会社に勤務しているデジタルマーケティング担当者を対象としたデジタルマーケティング実施状況についてのアンケート調査では、95%以上の企業がデジタルマーケティングの重要性を「とても重要」「どちらかと言えば重要」と回答しました。

出典:デジタルマーケティング実施状況についてアンケート調査

デジタルマーケティングに取り組む企業が多い今日、最新情報を常に追いかけながら運用しなければ、気づいたときには競合企業に差を付けられてしまうでしょう。

今回の記事では、2023年に予測されるデジタルマーケティングのトレンドを紹介します。2023年のマーケティング戦略立案にお役立てください。

1.SNSとインフルエンサーマーケティング

SNSとインフルエンサーマーケティングにおいては、以下のトレンドが予測されます。

  • TikTokの成長と影響力の継続
  • 分散型SNSの台頭
  • クリエイターエコノミーの成長と変化

TikTokの成長と影響力の継続

TikTokの影響力は2023年も続く予定です。

TikTokは2021年に46億ドルもの利益を出しました。2022年末までに18億人の月間アクティブユーザーが予測されており、前年比で142%増加することになります。

TikTokは一般ユーザーやクリエイターに向けた開発だけでなく、企業向けに広告のターゲティングオプションの改善にも取り組んでいます。2023年には広告のダッシュボードなどビジネスツールの利便性の向上が見られ、企業にとってより規模の大きく、より優れたプラットフォームになるでしょう。

分散型SNSの台頭

2023年は、SNSの非中央集権化の動きが高まると予想されています。

イーロン・マスクがTwitterを買収してから、ユーザーのTwitter離れが広がっています。モデルのジジ・ハディッドは、「マスクがCEOになってからTwitterがヘイトと偏見の巣窟になってきている」とし、アカウントを削除してしまいました。

ハディッドだけでなく、多くのユーザーがマスクによる新しいTwitterのあり方に反発し、Twitter上でのコンテンツやデータのシェアを控えているようです。

Twitterに衰退の兆しが見られる一方、注目を集めているSNSがあります。

1つはMastodon(マストドン)です。1度に500字まで投稿できる短文投稿型のSNSで、「お気に入り(≒いいね)」や「トゥート(≒ツイート)」、DMなど、Twitterと同じような機能を備えています。Mastodonの最大の特徴は、誰でも「インスタンス」と呼ばれるサーバーを運営できる点です。運営者独自のルールを適用できるので、各自の基準で投稿を制限したり、ユーザーの好みで他のインスタンスに変更したりできます。

もう1つはBluesky(ブルースカイ)です。Twitterの元CEOであるジャック・ドーシーが開発中の分散型のオープンソースなSNSで、ベータ版のウェイティングリストには3万人が集まっています。

中央集権型から分散型のSNSに移行すれば、クリエイターにもユーザーにもより自由な選択肢が与えられることになり、今までのSNS戦略とは異なる戦略が必要になるでしょう。

クリエイターエコノミーの成長と変化

コロナウィルスの流行以降、フォロワー数ではなく、コンテンツ自体に焦点を当てた新しいSNSの傾向が見られます。この傾向は、企業とクリエイターのパートナーシップを促進するでしょう。

企業が自身で顧客を惹きつけるコンテンツを作成するのは簡単ではありません。そこで適切なファン層と影響力を持つコンテンツクリエイターを探すことがキーになります。

コンテンツクリエイターとは必ずしもフォロワー数の多いインフルエンサーを指すわけではありません。広報担当の1人や顧客の1人、ニッチな分野の無名な専門家でも構わないのです。

2.BtoBマーケティング

BtoBマーケティングにおいては、以下のトレンドが見られるでしょう。

  • 動画が重要なキーに
  • ソーシャルセリングの積極的な導入
  • キュレーションコンテンツのニーズの高まり

動画が重要なキーに

2023年は、顧客とのコミュニケーションに動画を利用する企業がさらに増えるでしょう。

2021年12月のWyzowl researchによる調査によれば、企業の86%が動画をマーケティングツールとして使用しており、92%が動画を戦略の重要な要素として評価しています。企業が動画を使用する目的の1位は何らかの説明のためであり、2位はSNS用の動画、3位はプレゼンテーションです。

企業が動画の投稿に使用するのは、YouTubeとLinkedIn、Instagramです。特にLinkedInで顧客向けの動画を公開する企業が増えており、2023年も積極的に使われると予想されます。

ソーシャルセリングの積極的な導入

ソーシャルセリングとは、SNSで見込み客とつながり、「いいね」やコメントを通して交流しながら販売を促進する営業方法です。2023年は、このソーシャルセリングを導入する企業が増えるでしょう。

SNSの登場により、企業の販売チームは顧客とつながりやすくなりました。特に、販売サイクルが長く、見込み客との接点を保つためにデジタルチャネルを使っているBtoB企業にとって、SNSは重要な営業手段です。

しかし、販売促進用のメッセージを発信するためだけにコンテンツを投稿することと、投稿したコンテンツを通して顧客のエンゲージメントを高め、つながりを作ろうとすることには違いがあります。後者であるソーシャルセリングのメリットは、顧客と強いつながりを作れることです。

ソーシャルセリングにより顧客と関係を構築するには、企業側が販売チームにSNSの運用権限を与え、従業員個人が顧客に向けて自分の個性を出すことをサポートする姿勢が求められるでしょう。

キュレーションコンテンツのニーズの高まり

BtoBマーケティングでは、オリジナルコンテンツの作成だけでなく、キュレーションコンテンツを配信することも効果的です。自社商品に関連性の高いコンテンツであれば、顧客との会話を促進し、自社の関心が単なる販売活動だけでなく、問題の解決や情報の共有にもあることを示せます。結果、顧客との信頼関係を深められるでしょう。

キュレーションコンテンツとして共有できるコンテンツの例には以下などがあります。

  • 業界ニュース
  • 第三者調査
  • プレスリリース
  • インタビュー(動画やブログ)
  • ポッドキャスト

3.コンテンツマーケティング

コンテンツマーケティングにおいては、以下のトレンドが予測されます。

  • コンテンツを使ったエンゲージメントの促進
  • クリエイターと企業とのパートナーシップの改善
  • 販売だけではなく価値の提供が必要に

コンテンツを使ったエンゲージメントの促進

消費者が企業の価値観や精神に興味を抱くほど、勝ち残るのはコミュニティを育てられる企業となります。2023年は、コンテンツを情報の提供のためだけでなく、消費者とのつながりとコミュニティの作成のために利用することも必要となるでしょう。

現代社会において、人々は他人と交わる機会や支え合える人を求めてコミュニティを探しています。そしてたいていの人は、自分と同じコミュニティに属しており、自分と同じような価値観を持つ人(企業)から購入したいと考えています。

共感し「購入したい」と思ってくれるコミュニティを育てることは、企業が売上を伸ばすために取り組むべき課題となるでしょう。

クリエイターと企業とのパートナーシップの改善

2023年は、クリエイターと企業が一丸となってコンテンツを作り上げることが必須となるでしょう。

ネット上には優れたコンテンツもありますが、多くは不適切なインフルエンサーと連携していたり、誤ったターゲットを設定したりしています。 優れたコンテンツを作るには、優れたコンテンツクリエイターとパートナーシップを結ぶことが重要です。

多くのクリエイターは、企業案件の投稿であってもフォロワーが自然に受け入れてくれるように、コンテンツの内容や方針に沿ったパートナー企業を探しています。企業はクリエイターと共に成長できるよう、クリエイターにコンテンツの作成を押し付けるのではなく、コンテンツの作成に必要なガイダンスとサポートを提供することが求められます。

販売だけではなく価値の提供が必要に

コンテンツマーケティングでは、単にコンテンツを増やすのではなく、見込み客や顧客にとって価値のあるコンテンツを提供することが大切です。

予算内で価値ある良質なコンテンツを多数提供するには、キュレーションコンテンツの配信が効果的です。業界の動きに注意を払っており、最新の情報の収集に努めていることもアピールできます。

4.マーケティングオートメーション(MA)

マーケティングオートメーション(マーケティングの自動化)においては、以下のトレンドが予測されます。

  • シグナルベースのマーケティングへの移行
  • 自動化ツールの使用増加
  • GPT-4の登場と利用

シグナルベースのマーケティングへの移行

2023年は、技術ベースのマーケティングから予測中心のマーケティングへと考え方の変化が起こるでしょう。

これまでのデジタルマーケティングでは、データを収集して顧客の行動を観察してきました。しかし、今はデータよりもシグナルの収集が求められています。シグナルとは、たとえば「購入カートに入れた商品」や「ユーザーがいいねした投稿」など、「次に購入される可能性のある商品の手がかりとなるもの」のことです。

この新しい考え方は、ビジネスをより効率的にするだけでなく、顧客一人ひとりに合わせた最適なサービスの提供(パーソナライゼーション)を可能にします。 Google広告などのプラットフォームにも適用されており、Facebookやその他のSNSチャネルの方向性とも合致しています。

自動化ツールの使用増加

自動化ツールとパーソナライゼーションツールの大幅な使用増加も、2023年に見られるであろうトレンドの1つです。

Gartnerは、顧客のニーズを理解しているITチームを持つ組織は、2024年までに他の組織の顧客体験指標を20%上回ると予測しています。

顧客のニーズの理解とは、CRMやSNS、電子メールなどの内部プロセスの自動化ツールによって成立します。

自動化ツールとパーソナライゼーションツールの使用により、顧客が過去に何をしたか、次に何をする可能性があるかに基づいて、「次の最善の行動」などを自動化できる可能性があるでしょう。

GPT-4の登場と利用

GPT-4とは、オンラインのコンテンツを通じてトレーニングされる文章生成ディープラーニングモデルです。GPT-4 は以下に利用されます。

  • 質問と回答
  • テキストの要約
  • 機械翻訳
  • 分類
  • コード生成
  • 会話AI

GPT-4を使えば、企業に関する情報を少し入力するだけで、SNS用コンテンツの50のアイデアを提示してくれます。マーケティング担当者のタスクの多くを自動化し、業務の効率化に貢献してくれるでしょう。

5.マーテック(MarTech)

マーテックとは、マーケティング(Marketing)と 技術(Technology)とを掛け合わせた造語で、マーケティングを行うにあたってIT技術を使うことや、そのために使用するソフトウェアなどのことを指します。

マーテックにおいては、以下のトレンドが見られるでしょう。

  • マーテックへの投資増加
  • コンバージョン率最適化(CRO)に求められることの変化
  • メタバースに取り組むブランドの増加

マーテックへの投資増加

eMarketerによると、アメリカでのマーテックへの投資は2022年に初めて200億ドルを超え、前年比で15%増加しました。これは、データを収集して保存し、そのデータを使用して意思決定と実行ができるテクノロジーの開発に企業が投資しているためです。

投資の30%以上をBtoB企業が占めており、この割合は今後数年間で緩やかに増加し、2024年には85億ドルになると予想されています。

コンバージョン率最適化(CRO)に求められることの変化

これまで、多くのマーケティング担当者がコンバージョン率の最適化 (CRO) のために試行錯誤してきました。 しかし、コンバージョン率だけを見る時代は終わりに近づいているかもしれません。

クライアントは、コンバージョン率の向上+αの結果を求め始めています。コンバージョン率を最適化した結果収益にどのような影響を与えるのか、また、ユーザーエクスペリエンスにどのような影響を与えるのか。2023年は、数値だけではなく、これらを含めたより大きな視点でのコンバージョン率の最適化が求められるでしょう。

メタバースに取り組むブランドの増加

メタバースは2022年に話題を呼びましたが、コストの増大により成長は予想よりも遅くなりました。しかし、一部の企業はすでにメタバースによる新時代に向けた戦略を考え始めています。

Nikeは2022年11月14日、バーチャルグッズを販売するオンラインストアをローンチしました。 2023年は、Nikeのように多くの大手ブランドがメタバースへの取り組みを行うことになるでしょう。

まとめ

インフルエンサーやコンテンツマーケティング、マーテックなどの2023年に予測されるトレンドを紹介しました。デジタルマーケティングの技術や傾向は毎年変化しています。業界の細かい動きにも注意し、ビジネスに役立てていきましょう。

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この記事は、Digital Marketing Instituteに掲載された「What are the Top Digital Marketing Trends for 2023?」を翻訳した内容です。

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